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    堺・日置荘の小さなサンクチュアリ「バッバルーチ」

    更新日:2025年9月3日

    【大阪万博から足をのばして①】


     筆者は大阪万博のイタリア館におけるバジリカータ州ウィーク(2025年8月25~29日)のバジリカータ州観光局(APT)のプロモーションイベントにお招きいただいた。

     (当日セミナーのYoutube動画のリンクはこちら。映像の57分頃に筆者が登壇。)


     その足で、今回初めて、筆者のソムリエ学校の同窓生で、堺にてイタリアンレストラン「バッバルーチ」を経営するシェフ、森友亮(Yusuke Mori)氏をたずねた。

    レストラン「バッバルーチ」概観。森友亮氏の祖父が農具をしまう倉庫として建て、父上がギャラリーに改装した建物を、さらにレストランにリニューアルした。
    レストラン「バッバルーチ」概観。森友亮氏の祖父が農具をしまう倉庫として建て、父上がギャラリーに改装した建物を、さらにレストランにリニューアルした。

     森友亮氏(以下、森シェフ)は、私たちのイタリアワイン文化講座(ACCVI)のオンラインで、コロナの真っさなかに、2回ほど出演をお願いした。もともと森シェフは、シチリア料理や文化やワインに造詣が非常に深い。

      

     講座ではシチリアの東部の都市、カターニア(第1章第3回エトナ山:2020年12月開催)と、中西部の都市、パレルモ(第1章第4回ヴィットリア、2020年1月開催)のふたつの地域の郷土料理について解説をお願いした。オンラインではあったが、森シェフがシチリア料理のエッセンスをテンポよく、鮮やかに語っていたのは、つい昨日のことのようだ。


     タクシーを降りて入口を探していると、森シェフとご両親がわざわざ出迎えに出てこられ恐縮した。幹線道路から一本奥まったところにある、昔ながらの住宅街。

     

     黒いシックな瓦葺きの古い家や蔵などの建物が残るその貴重な地区は、その名を日置荘(ひきしょう)という。日置荘の地名の由来は、「古代、太陽神の祭祀をもって大和政権に奉仕していたといわれる、「日置部(ひきべ)」集団の居住地であり、また、中世には興福寺の荘園であった「日置荘」がおかれたことに由来する」(出典:堺市ホームページ


     わたしたちは、朝、仁徳天皇陵を堺市役所の21階の展望台から眺めた。その太古の時代から、日置荘は太陽に祈りを捧げる場所だったのかもしれない。


     ここは、レストランとギャラリー、庭園、果樹園と菜園が一体となっている。まるでその一角だけがひとつのサンクチュアリ(イタリア語で「サントゥアリオ」)のような落ち着きがある。太陽がさんさんと輝き、空の色に秋の訪れをかすかに感じる。 

     

     

     レストランの裏手にある、森シェフの果樹園と菜園 

     

    無農薬栽培のバジル(バジリコ)
    無農薬栽培のバジル(バジリコ)


    中庭の緑と木洩れ日が美しい窓辺。
    中庭の緑と木洩れ日が美しい窓辺。
    毎朝、森シェフみずから漁港に買い付けにいく。
    毎朝、森シェフみずから漁港に買い付けにいく。


    前菜(アンティパスト)魚介の盛り合わせ。
    前菜(アンティパスト)魚介の盛り合わせ。
    この日は、マグロ、タコ、カンパチ、ヒコイワシ(アリーチ)のマリネ。
    この日は、マグロ、タコ、カンパチ、ヒコイワシ(アリーチ)のマリネ。
    シェフのおまかせワインは、グリッロ種とカタラット種のブレンド。
    シェフのおまかせワインは、グリッロ種とカタラット種のブレンド。
    ウニのブルスケッタ(手前)
    ウニのブルスケッタ(手前)

    自家製マグロのからすみとトマトのブルスケッタ
    自家製マグロのからすみとトマトのブルスケッタ
    森友亮シェフ
    森友亮シェフ

    鱧(はも)のフリットと、赤玉ねぎのアグロドルチェ(実は一番美味!)
    鱧(はも)のフリットと、赤玉ねぎのアグロドルチェ(実は一番美味!)
    イナゴマメという豆の粉を練り込んだ手打ちパスタ。イワシのソース。
    イナゴマメという豆の粉を練り込んだ手打ちパスタ。イワシのソース。


    松の実と焦がしパン粉をまぶすのがシチリア料理の特徴。(森シェフ談)
    松の実と焦がしパン粉をまぶすのがシチリア料理の特徴。(森シェフ談)

    天然真鯛のアクアパッツァ 塩とレモンとオリーブオイルでいただく。
    天然真鯛のアクアパッツァ 塩とレモンとオリーブオイルでいただく。

    自家製マグロのからすみ 巨大。味わいはマイルドで塩気は優しい。
    自家製マグロのからすみ 巨大。味わいはマイルドで塩気は優しい。
    カンノーロという揚げ菓子。リコッタの軽いクリーム。マラスキーノチェリーとピスタチオが絶妙。
    カンノーロという揚げ菓子。リコッタの軽いクリーム。マラスキーノチェリーとピスタチオが絶妙。

    パンも自家製。シチリアの小麦粉と、天然酵母のこだわり。
    パンも自家製。シチリアの小麦粉と、天然酵母のこだわり。

    森シェフが手にしているのはククッツァ・ロンガ。(英:ロング・ズッキーニ)冬瓜のような味の野菜。
    森シェフが手にしているのはククッツァ・ロンガ。(英:ロング・ズッキーニ)冬瓜のような味の野菜。
    ククッツァのミネストラ。「あたしはあんまりこの野菜好きじゃないの。うちのお母さんもこれ作ってくれるけど、お母さんのより森さんのほうが断然美味しい!」というのには、思わず笑ってしまった。
    ククッツァのミネストラ。「あたしはあんまりこの野菜好きじゃないの。うちのお母さんもこれ作ってくれるけど、お母さんのより森さんのほうが断然美味しい!」というのには、思わず笑ってしまった。
    フィノキエットのポルペッティーノ(お団子)松の実とシチリアのレーズンがアクセント。カターニアに住んでいたこともあるゲストが、「とても美味しい」と感激していた。
    フィノキエットのポルペッティーノ(お団子)松の実とシチリアのレーズンがアクセント。カターニアに住んでいたこともあるゲストが、「とても美味しい」と感激していた。

    さまざまな自家製の手作りアイテムが目を楽しませてくれる。
    さまざまな自家製の手作りアイテムが目を楽しませてくれる。
    食後酒のリクエスト。ベルガモットのチェッロにご満悦。
    食後酒のリクエスト。ベルガモットのチェッロにご満悦。
    ミント、レモン、ベルガモット、フィノキエット、などなど。食後酒で語らう甘いひととき。
    ミント、レモン、ベルガモット、フィノキエット、などなど。食後酒で語らう甘いひととき。

    ワインショップを併設。セラーはかなり涼しく保たれている。
    ワインショップを併設。セラーはかなり涼しく保たれている。
    ベルガモットの実がなりはじめていた。
    ベルガモットの実がなりはじめていた。
    左端の丸い葉っぱがイナゴマメの木
    左端の丸い葉っぱがイナゴマメの木

    知り合いが持ってきたという、ピエモンテのバルベーラ種
    知り合いが持ってきたという、ピエモンテのバルベーラ種
    ナスの花(ナスはシチリア名物のカポナータとなる)
    ナスの花(ナスはシチリア名物のカポナータとなる)
    ククッツァの成っている様子。
    ククッツァの成っている様子。
    ちかじかシチリアに研修で渡航する予定。
    ちかじかシチリアに研修で渡航する予定。
    イタリア語で会話がはずむ。
    イタリア語で会話がはずむ。
    いつかバジリカータ州マテーラでの再会を約束した。
    いつかバジリカータ州マテーラでの再会を約束した。

     筆者は森シェフとともに、トスカーナ地方のイタリアワインのソムリエ学校で3カ月間ほど一緒に学び、贅沢なことに(まだ試験が先の余裕がある頃は)寮の仲間たちとともに夕食をごちそうになっていた。初めの頃は大型スーパーマーケット(エッセルンガ)への買い出しにも付いていき、プロの仕事を覗き見させてもらっていた。

     

     なんということのない、トスカーナの田舎のスーパーの食材が、森シェフの確かな技術にかかると、魔法のように素晴らしい料理に変わっていくのを、たびたび信じられない思いで瞠目していた。(それはひとつも再現できなかった)また、授業で余ったワインを片手に、仲間たちとシチリア料理のさまざまな話を聞かせてもらったのも懐かしい。


     だから、この歴史ある日置荘の豊かな自然のなかでつくられる野菜や果実と、堺の豊かな海の幸が織りなす、森シェフをとりまく全体の世界観に、あらためてじかに触れ、体験できたことは、非常に感動的だった。


     また、家族経営で、祖父、父、友亮氏と少なくとも三代にわたって創り上げていくプロジェクトであることも、非常に印象深かった。祖父はもともと農業、父上は造園家である。

     

     その晩、宿泊拠点の和歌山に戻った筆者は「堺には、造園業が多い」という話を、和歌山市駅前の行きつけのバーで聞いた。その人は堺生まれで小学校まで堺に住んでいたという。


     なぜ造園業が多いかというと、堺は刃物が有名で、それは包丁だけにとどまらず、植木の剪定に欠かせない鋏(はさみ)などの刃物も秀逸なのだ。「一度、堺の鋏を使ったら、他の鋏は使えなくなる」という。


     堺は茶の湯の創始者の利休の生まれ故郷だ。わたしたちは日中、堺の中心部にある千利休の生誕地も訪問した。それだけに、庭も重要なコンテンツ、メディアとして発達したのだろう。


     中世の海港自治都市、堺の豊かな海と刃物の伝統。そこで発達した庭園技術と茶の湯の文化。そして日置荘の太古から続く太陽への祈りの場と豊かな自然。そこに森シェフがイタリアから持ち帰ったシチリアの伝統的な食の技術、それらがつながり、一体となり、ひとつの小宇宙を創り出している。ここは小さなサンクチュアリ(サントゥアリオ)なのだ。


     バジリカータ州は世界遺産で有名なマテーラからはるばる来てくれたゲストふたりも大満足で、大変有意義な一日となった。

     

     

    2階は和食器のギャラリー。
    2階は和食器のギャラリー。
    さまざまな作家の作品を父上がコレクションしている。筆者は漆器のカトラリーをお土産に購入。
    さまざまな作家の作品を父上がコレクションしている。筆者は漆器のカトラリーをお土産に購入。

    【バッバルーチへの行き方】

     南海電鉄「北野田駅」からタクシーで行くのがもっともスムーズとのこと。大阪のメトロ御堂筋線「中百舌鳥駅」または南海電鉄「中百舌鳥駅」からもタクシーで20分程度なので大阪から日帰りでアクセス可能。気候の良い時期に健脚の方は南海電鉄「萩原天神」から徒歩15分程度という手もある。


    ※筆者はゲスト2名を伴って訪れた堺の歴史的地区の鉄炮鍛冶屋敷(堺市立町家歴史館 井上関右衛門家住宅)(堺市北旅籠町)でタクシーを電話で呼び(堺相互タクシー:10分程度できてくれる)、レストランへ直接向かった。所要時間は30分程度、料金はぴったり5000円。帰りは、メトロまたは南海電鉄「中百舌鳥」駅まで2500円程度だった。4名程度のグループならタクシーがおすすめ。


    訪問日:2025年8月27日。




     


     
     
     

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